ながい睫毛と拗ねた頬




俺は先輩の口から、いわゆる告白的なセリフを聞いた事がない。
どうにか付き合っているらしい、と言えるのはまぁやることをやってるからだが、付き合ってるっぽい、とは言えても「恋人です」と言い切れない。

「かなしい…」
「ああ?」

並んで歩きながら横眼で見つめ、思わず呟きを零すと、怪訝そうな顔をした三上先輩がこっちを見た。
ついさっきあくびをしてたから涙目の瞳が、何が、と言いそうに眇められる。

「先輩、ちょっと確認ですけど」
「なんだよ」
「俺のこと好きですか?」
「はぁあ?」

呆れた顔で失笑する先輩に対して、俺は至って真剣だ。負けずと見返し返事を待っていると、ようやくその唇が動く。

「何言ってんの、お前」
「いやだからね。俺の」
「三上!」

立ち止まりもう一度説明をしようとしたところで、向かう先から歩み寄ってくる人影がある。
すらりとした長身が涼しげな中西先輩が、俺たちに手を上げ笑いかけた。歯切れ悪く口を噤んだ俺にちっとも構わず、三上先輩も応えて笑う。

「メール見た」
「じゃあ返事してよ。来んの?来ないの?」
「行くよ、人数は?」
「こっち四人。あっちが五人っつってるから、もう一人…」
「ああ、じゃあこいつ呼べば?」
「藤代?いいねぇ。サービスしすぎだね男性陣」
「なんの話ですか?」
「何って」

合コン。声をそろえた先輩二人に、俺は思わず声を低くする。

「合コン…に行くの、先輩」
「うん。行くっつったろ今」
「いや三上もだけど、藤代お前も来ないかって…」
「行かない!」
「え?」

ぜったい行かないからね!先輩の馬鹿!!

思いっきり言い放って三上先輩をひと睨みすると、俺はもう一つおまけで馬鹿!と言い残し、その場を駆け去った。


「あー…」
「馬鹿って言われた」
「…なー三上。俺のこと好き?」
「あ?好きだよ」
「あ、そう。…そのうちほんとに泣いちゃうんじゃないのあいつ」

さらりと返った好き、という言葉に、中西が失笑する。いい加減にしとけよ、と小突くと、三上は心底うれしそうな笑顔で藤代の背中を見送った。

「だって可愛いんだもんあれ」

拗ねる横顔や恨めしげに見つめる瞳が堪らないほど愛おしく思えて、三上は切なげに吐息した。
真夜中に抱き合う姿とあまりに隔たって、その落差に鼓動が高鳴る。

「あー…これはしばらく言ってやれねーなぁ…」
「お前はマゾのくせして時々おかしいよね」
「おかしくて結構だよ。はぁ…たまんね…」

胸元を押さえてしきりに溜息をつく三上に呆れて、中西は切り出す。

「で、行くの」
「馬鹿お前、行くわけねぇだろこんな状態で」
「最初から行く気なんかないくせに」
「わかっててノッたくせに」
「だって面白いんだもんお前ら」

じゃー根岸でも誘おうかなーちょっとグレードが下がるけど、と失礼なセリフを呟いた中西に、三上は並んで歩きだした。
なに、追いかけないの、と聞くと、もうちょっとしてから、と薄ら笑顔で頷く。

「変態」
「お前ほどじゃねーよ」
「類は友を呼ぶからねぇ」

そういうお前のことが好きな藤代も、よっぽど変態だよな、と言うと、三上はもっともだと言って声をあげて笑った。












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性格変わってる…!コメントのしようがありません……。
サイトポリシー違反かしら…?(切ないホモを目指していたはずが)(片鱗も見えません)

えっと、昨日の更新に引き続き、大学生設定でお楽しみください


20080611 板村あみの