ことばとかたち
※R15程度で性描写ありですので、お嫌いな方はスルーしてくださいね。
「…んっ…あ、あぁっ…」
セックスしてるときの三上センパイの声は、すっごいエロいと思う。
そこら辺のAVなんか比べ物になんない。
「あっ…藤代…っ、も……」
「……センパイ、もうちょっと声…落として…」
聞こえるその声だけで、引き絞られるように下腹が熱くなってしまう。もっと聞きたい気持ちとは逆のことを言った。早い、なんてなめられちゃたまんないし。そういうちょっとした制約でも、有ると先輩も感じ易くなるの、もう知ってる。
「案外、壁、薄いんだよ…。ココ…」
うっすらと瞼を持ち上げて、俺を見る先輩。乱れて、うつろにぼんやりしてる。滲んだ涙が、すぐに閉じた瞳の目尻を伝った。思わずそれに口付けて舐め取ってしまう。
「…っぁ…」
でもそんな少しの動作にも、切なげな声を漏らす先輩がもう愛しくて愛しくて、ついつい下半身の動きも激しくなると言うものだ。
「……っん…っ……、ッ…っ…」
しがみ付くように俺の首に腕を絡めて、律動に合わせて、堪えるような嬌声を漏らす。別に俺のいうこと聞いたわけじゃなくて、自分が恥ずかしいからだろうけど。声抑えてるのは。
なんだかそんな様子を見てたら、虐めてやりたい気持ちが何時もより更に増して、
「ね…好き…?」
わざと曖昧に問い掛けた。
ついでに一度深く息を吸うと、いきなり体の動きを止めて先輩の首筋に顔を伏せる。
じっと動かずに、返事を待つ俺。
治まらない呼吸で、身動ぎする先輩。
返事がいつまでも返ってこないので、耳朶に唇を持っていってもう一度聞いた。
「先輩聞いてる?好きかって聞いてんの」
熱い呼気を吹き込むように、最後にオマケで舌を差し込んでやった。
「…っ何が…だよ」
眉根を寄せて、首を竦める先輩、俺から顔を逸らす。それでも腕は力なく、俺の首に絡んだままだ。
「だからさー…わかるでしょ?」
焦らすようにゆったりと体を揺らし、追いかけて半ば強引に口付ける。濡れた音を響かせて舌を割り込ませる。
「……っ、は…ぁ……」
抵抗は初めの一瞬で、直ぐに応えて舌を絡めてくる。溢れて唇を濡らす唾液を指先で拭ってやりながらも俺は、しつこく食い下がってもう一度聞く。
「好き?」
ホントは知ってるけど。
「俺アタマ悪いから、分るように言ってよ」
「付き合ってらんねぇ……」
「じゃぁなんでこんなことしてんの?俺達」
繋がったままの微妙な刺激に、激しく突き上げてしまいそうになる自分を抑えて、ゆっくりと追い詰める。
先輩は俺から視線を逸らす。
さすがにココまでやっといて今更、関係アリマセンって顔はできないでしょ?
だから言って。
「俺と居るの、好き?」
「…っ…んっ…」
「俺とエッチするの、好き?」
「知るか…っ、ぁあ…ん」
――――俺のコト、好き?
もう反論も無く、ひたすら唇を噛み締めて、先輩は辿り着きそうで届かない感覚に耐えてる。
俺だっていい加減限界だ。
まぁしょうがない、と諦めて体を起こすと、膝の裏を持ち上げて足を更に開かせる。言葉を止めた俺に、次に来る衝撃を予感してか先輩の体が僅かに強張った。漏れる溜息は切なげに震えて、それが拒否の強張りでない事が知れる。
もうなんの駆け引きも無く、ただ追われるように腰を進める。
部屋には激しい息遣いと、途切れ途切れに漏れ聞こえる嬌声、ベッドの軋む音。熱く蟠る熱を、カーテン越しの青い光が僅かに照らす。
強く拒否されないのは、この気持ちが受け入れられてるからだと、普段は信じている。
事実時折、想う彼の言葉以外の全てに、…眼差しに、表情に、声に、今こうして触れる肌の感触に、
腑に落ちる瞬間があるのだ。
想われている、と。
でもそれでもこうして、半ば戯れのように求めてしまう。
小さくてもどんなに些細なことでも良い、何か形になる言葉、表現が欲しくて。
…今日も聞けなかったけど…。
まぁいいか。これから幾らでもねだる事は出来るから…、
そんな事を思いながら先輩の吐息が徐々に収まっていくのを背に聞き、立ち上がり後始末をしていると、ぼそり、とくぐもった呟きが聴こえた。
「……え?先輩?」
「なんでもないよ」
「…ちょ、もう一回、もう一回言ってみて!」
「なんも言ってねーっつの!」
「うそうそ絶対!もう一回聞きたい!」
「もう絶対いわねぇ!!」
「そんなー!」
嘆きながらも再び覆いかぶさるように抱きついてしまう。やばい、超可愛いよ!真っ赤じゃん!
「先輩!もう一回俺の目を見てちゃんと言うか、もう一回するか、どっちがいい?」
「ハードル上がってるし! どっちもやだよ!どけ!」
今度こそ本気の反撃で、がら空きだった腹部に一発くれられて、俺は幸せな気分のままダウンしてしまった。
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★2002年のホイッスル放浪中(自分の方向性が)に書いた藤三。あ、あまくないですか!?
旧拍手お礼SSでした。
20080809 板村あみの