鴉片
≫≫鴉片
2008/08/15 発行
A6/16p ¥200 コピー誌
高土拷問小話。
R15と見栄を張ってみましたが玉砕...。
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「…ちっ」
返り血で滑りそうな柄を握りなおして舌打ちする。背後にやってきた山崎の荒い呼吸を聞きながら、土方はそっと背中を逸らして囁いた。
「山崎、東が薄い。抜けられるか?」
「やりましょう。土方さん一人通すくらいなら、なんとかしますよ」
俺の刀ぁもう斬れませんがね。
ふと笑って答える男の物言いに土方は薄く笑う。何人斬った、そう問いかけると、さぁ、もう数えてません、そう言った山崎の肩が触れた背中越しに揺れた。
毎日の夜廻りは二人一組で。当番は役職付にも万遍なくまわり、ひと月も観察すれば今日誰がこの道を通るかなどすぐにわかる。月影にギラギラと光る刀身を真っ直ぐに突き付ける集団に、囲まれた今の状況を油断と謗られれば返す言葉も無い。斬り伏せる間に見た限り、何人か見覚えのある顔が交る。名指しで指名手配のかかる程の浪人達、所属する集団の名は確か。
「鬼兵隊…」
呟くのに同意した山崎が息をのむ。気を取られ振り返ろうとした一瞬、背後に襲いかかる刀身をかろうじて受け流し、膝をついて見た先に立つ男の姿に土方は眼を見開いた。
「高杉…!」
ぐ、と踏み込んだ足に力を込める。握りこんだ柄巻の感触に血の香りが漂い、勢い込んで駆け出す土方の耳に、山崎の叫ぶ声は遠い。闇夜の中に引き立つ緋色の袖口から、うっそりと手を挙げた高杉の口元がゆったりと嗤う。やれ。そう動いた唇は、不意に立ちはだかった大柄な男の上背に阻まれて見えなくなった。退けと口汚く叫び構えた刀を切り上げると、一瞬の鍔迫りの後力任せに押し返される。たたらを踏んで構えなおそうとする頃には、上段から斬りおろす刃を受ける事に気を取られて、背後で振りかざされた凶刃を避ける事もままならなかった。
肩口から熱湯を浴びせられた様な痛みに呻くと、振り返ろうとした視界が暗くなる。二度めに膝をついて正面を見上げれば、満月に少し欠けた月を背に高杉が一歩を踏み出すのが分かった。青白い影の中右目だけが濡れたように光る。相変わらず妖しく笑みを浮かべる口元が、何事か言葉を紡ごうとしたところで、土方の意識は溶ける様に四散した。
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リボオンリーでインテックスへ旅行した際、新幹線のチケットを買い間違えた私の
蔵都さん・蜂矢さんからの罰ゲーム。「エロ本を作ってきてください」
お応えするべく頑張りましたが、ぬるぬるでした。プラトニック上等じゃい!
鴉片は阿片と同様→発展して「やみつきになる」とか「やめられない」とか、そう言う意味があるようです。
20080815//板村あみの