メロウ


メロウ


≫≫メロウ

2008/08/15 発行
A5/15p ¥200

ディノ獄、並盛高校にて未来を捏造(でも別に学校設定は活きていない)
ほのぼのを目指してみました…目指しては…!


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 まだあまり背の高くないニセアカシアの根元近く、青青と生い茂る芝の上に弁当を広げた主を窓越しに眺める。ほのぼのとした笑顔に、つい最近衣替えをした夏服の白が目に眩しい。開け放った窓枠に映し出される光景と、そこから流れ込んだ初夏の匂いに、隼人は眼を細めた。

「なごむな…」
「ん、なにが?」

 購買の紙袋を抱えて前の座席に座った山本に、あれ、と顎で示す。頬杖をついて見つめ続ける窓の先には、ボンゴレ次期十代目の沢田綱吉がいる。太陽の光に風さえきらめきそうな午後、中庭で昼食を摂る主の隣には、肩を超えた髪をゆるく二つに結った笹川京子の姿もあった。
 あの様子を見せて聞けば、十人中十人が『かわいい恋人同士』と答えるであろう、なんとも微笑ましい様子に、向かいで菓子パンのビニールを破いた山本も手を止めて笑った。

「あぁ、なごむなぁ」
「夢のようだな…」
「そうだなぁ」

 ありゃあハルが見たら大騒ぎだな。
 同意を求めたくせに、隼人はそう言う山本のセリフをかけらも聞いていない。あまりに余念なく見つめるのでずるずると滑っていく肘を起こしながら、微笑交じりに呟いた。

「写真撮っちゃだめかな…」
「…獄寺って、ツナのことになるとちょっとヘンなるよな」

 ちょうどかぶりつこうとしていたパンを山本の口に強引に押し込む。間抜けな声で呻いた様子に満足げに鼻を鳴らすと、隼人は再び中庭に視線を下ろした。
 膝に落としたらしい苺にあたふたとする綱吉を笑って、京子が拾ったそれを口元に運ぶ。あーん、と促されて眼を白黒させている綱吉の慌てぶりが可笑しい。京子もそう思ったのか、顎を引いてクスクスと笑う。肩に下ろした髪がきらきらと揺れて、それにつられたように綱吉も笑いだした。
 遠目に見る二つの笑顔と、それを取り巻く幸せそうな空気。隼人はゆっくりと瞬いて喉の奥で笑う。
 笹川、グッジョブ…。

「昼飯ひとつとってもシブいっす十代目…」

 うっとりと呟く様子に残念そうな笑みを浮かべた山本が、やっとのことで咀嚼したパンを、ブリックパックの牛乳で流し込んでから吐息した。

「…お前、勉強はできんのになぁ…」

 メシ食って落ち着いた方がいいぞ、そう言われるのを右から左に聞き流し、幸福な風景を焼きつける様に隼人は見つめ続けた。





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未来編終了後のしばし平穏な日々、を捏造しました。
高校生ボンゴレファミリ プラスαにてどうぞどうぞ…!

2008/08/15//板村あみの